公開2日目、都内シネコン土曜日のレイトショー。約1/3強の埋まり方は(ガンダムの中では)地味な映画としては上々じゃないかと思った。機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島。
ファースト・ガンダムのなかでも(その作画を含め)独特の味わいを残す独立エピソードを単独で劇場映画にするのは、安彦良和氏だからGOの出る話だと思った。そして見終わったときの読後(?)感もまた、ああ、安彦さんらしい映画だったなあ、と。
*以下、ネタバレに通じる内容もあるので、未見の方は離脱を
ガンダムというストーリー自体、大きな1年戦争を舞台にしつつ、主人公が戦争を勝利に導いたりするお話しでは無く、巨大な戦争の中である程度活躍した部隊の話なんだけど、ククルス・ドアンの島のエピソードはその中でも戦争の帰趨に関係しない(弾道ミサイルがちゃんと機能したら関係したけども)些末なスポット戦場の話。
でもガンダムのストーリーテリングって、戦争を俯瞰する面白さじゃ無くて、個々の戦場が幾重にも重層して戦争を構成していると感じさせる手法だと思っていて、このククルス・ドアンの島を含めて、物語の厚みを感じさせるのがすごく好き。そこに戦争があっても子供達の喧しい様は変わらないのも、とても良いと思うけれど、一方で島の子供達の描写が明るくて、だからドアンの闇とのコントラストがひりつくような感覚を・・になっていないのがなんか勿体ない。
ってか、ククルス・ドアンって、連邦軍は残地諜者と認定したジオン軍の脱走兵、じゃなくて、正規の(?)ジオン軍残地諜者ですよね?パンフレットにも脱走兵と書かれているので迷うのだけど、前半のマ・クベとウラガンの会話からもドアンがアレグランサ島に秘匿された弾道ミサイルサイロの番人的エージェントであることは明示されていると思うんだけど、違いますかね。。
だからドアンの内的相克は、表向きジオン軍の残置諜者でありながら戦災孤児を匿い、秘かに弾道ミサイルの無効化工作を行っている、という風に読んでいたのだけど、この辺はシナリオや画コンテにどう描かれているのか気になるところ(ええ、買っていません、1.3万)
そうじゃないと、脱走兵がジオン最高機密のひとつである南極条約違反の弾道ミサイル基地を隠れ家にし、ひとりでモビルスーツの補修、メンテナンスを行い、長期に渡り稼働体制を維持してることになる。ガンダムって初期の頃からちゃんと整備兵がわらわらとMSを整備してる世界観を持ってるので、脱走兵の持ち逃げモビルスーツが高機動型ザクと互するコンディションを維持し続けるというのはなあ、と思う訳です。(残置諜者なら豊富な予備パーツ含むメンテナンスキットを保有していて違和感は無い)
で、ラストの「戦争に匂い」の象徴たるザクを海に沈めるシーン、TV版の時は、その象徴するものは分かる一方で現実問題として次のジオンなり連邦なりが来たとき、どうするの?と子供心に思ったモノですが、今回の映画版であれば、弾道ミサイルの失敗により、この島に戦略的価値も戦術的価値もなくなったので、ジオンも連邦も兵を送る意味が無いと考えるとアリかな、と。
安彦良和氏らしいアニメ的オーバーアクションはもうイマドキの演出では無いよナアと思いつつ、シリアス一辺倒ではハサウエイになっちゃうのでこれも良いかと思ったし、パリは燃えているか、を教養として(?)やりあうマ・クベとゴップ元帥の会話はマ・クベの最後の台詞への伏線としてすごく効いているし、楽しみました。
ファースト世代へのプレゼントとして、新しい世代へのオリジナルガンダムの世界を伝える小品として、とても良かったと思います。
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6/6売りの週プレに安彦さんのインタビューが載っていました。ファーストでのドアンの脱走兵かどうかについても記載がありました。映画版での立ち位置への言及は見つかりませんでした。自分はファーストの再放送を中学くらいでみた世代です。ドアンは観に行こうか迷ってます。
ありがとうございます。週刊プレイボーイ!すっかり縁の無い雑誌だ(笑)