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BenQ SW272U:新世代フラッグシップ 写真・映像向けカラーマネジメントモニター

2023年8月、BenQのカラーマネジメントモニターの新型 SW272Uが発売されました。
同社27inchのフラッグシップモニターとしては2年半ぶりの更新になります。発売と同時に検証機を提供頂き、2か月、様々な条件で使ってきました。その印象は、順当な進化に留まらず、中身も外見も大きくクオリティを引き上げたBenQ新世代を感じさせるものでした。以下、SW272Uの解説と評価を、不満な部分も含めてまとめたレビューです。
BenQ SW272U:公式製品ページ

このレビューはBenQ社より検証機をご提供頂き大学の研究室で2ヶ月に渡り試用、執筆しています。それ以外の利益供与(報酬等)はありません。本レビューは同社に感謝しつつもフェアで正直な視点で書いているつもりです。メーカーの原稿チェック等はありません。そのため、ワタシの間違いや事実誤認が含まれる場合があります。
事実誤認や間違いがあれば修正し、その修正点を明記します(誤字脱字の修正を除く)。
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フラッグシップってどこが違う(どこが凄い)のよ、を機能とともに解説していくととても長いblogになってしまい、イマドキ長すぎる文章は読んで貰えないよなあと思うので、最初にSW272Uの全体像(概略)を書いたあとで、各論として以下のように書いていこうと思います。目次はクリックすると該当項目に遷移できます。

SW272Uの全体像(概略)

SW272Uは新しい液晶パネルと制御回路で、綺麗で「正しい」色再現をします。この「正しい」という部分がキーで、写真や動画のファイルとしての正しい色を表示することは、クオリティの高いクリエイティブを行うときに必須の要件です。

そのため、BenQの上位機はAQCOLORシリーズとして高い精度の色管理とCalMAN 、PANTONE 認証といった第三者機関の認証を取得していますが、SW272UはAdobe RGB 99%、sRGB 100%、Display P3、DCI-P3 99%と同社のハイエンド製品の中でも最も優れた色再現性を誇ります。

その高い精度の色再現性を支えるのは10-bitパネルや制御回路のハードウエア、出荷前の全数キャリブレーションに代表される品質管理、通常の横位置だけでなくピボットによるモニターの縦位置使用にも対応する遮光フードであり

色管理精度の「維持」を司るハードウエアキャリブレーションです。そのハードウエアキャリブレーション用のソフトウエアも新しいアプリケーション「Palette Master Ultimate」になりました。

また、そうした「中身」だけでなく、「外見」としてのデザインや質感、使い勝手もワンランク上のものに刷新されたのも使っていて気分の良いポイントです。

ハードウエアとして見るSW272U

BenQのフラッグシップは、3年前にリリースされた32型のSW321C、2年半前、その性能はほぼそのままに27型にサイズダウンしたSW271Cでした。今回は32inchはそのままに27inchがフルモデルチェンジすることになりました。

ワタシは自宅書斎で、SW321Cをメインモニターに、SW271Cをセカンダリーモニターにするデュアルモニタースタイルで使っています。3台をスペックで比較してみると

赤文字、ブルーセルが優位点です、色域でこれまで難しかったDisplay P3 / DCI-P3が遂に99%カバーになりました。さらにHDR10/HLG対応なのは変わらずですが、輝度が400カンデラになったのはHDR映像制作が増えつつある現在、大きなアドバンテージポイントです。

横位置使用時は140mm、モニターの上下昇降が可能です。

今回、SW271C、321Cでは板状だったアームスタンドが、円柱型になっています。その結果か?モニターの上下動や首振りが、より安定感を持って動作するようになったと思います。
背面端子部もカバーが覆い、品のある意匠になっています。

ピボットして縦位置で使用時は約99.5mmの上下昇降幅ですが、一番下に降ろしてベースに接地させるとサイネージ風のルックスになり、個人的にとてもイイ感じです。

縦位置使用時も遮光フードが付きます(パーツ組み替えで対応)。

パネルの背面。

操作ボタンがパネル前面からパネル下部に移動しました。操作感は好き嫌いがありそうですが、正面のルックスはシンプルで美しくなりました。操作は新しくワイヤレスになったOSDコントローラー、ホットキーパックG3(後述)が主になると思うので、本体ボタンはこれが正解に思います。

入力端子はSW271C、321Cと同じ。個人的にはUSB-C入力がもう1系統あると、デスクトップ用とノート用に分けられるのにと思いますが、これは他社のフラッグシップも同様なので理由があるのでしょう。

従来、モニター左手側面にあったUSB端子、ヘッドホン端子、カードリーダースロットが底面に移動しました。これによる使い勝手の向上は非常に大きく、ナイス判断だと思います。これもUSB-A端子2つのところをひとつUSB-Cにしてくれると使い勝手がさらに向上するところですが、前述のようになんらかの事情(理由)があるのでしょう。

同梱のケーブルは
・USB-C to C ・HDMI ・DisplayPort の各ケーブルに、USB A  to Bのアップストリーム用ケーブル。
USBダウンストリーム端子やカードリーダーを使うにはUSB A  to Bのアップストリーム用ケーブルを繋いで置く必要があります(USB-C接続時を除く)。

OSD(オンスクリーンディスプレイ)の表示デザインが少し変わりました。

背面に把手が付いたのも◎(SW271C、321Cはスタンドアームの上端が把手になっていました)遮光フードの付いたモニターは側面を持てないので、本体に把手があると安心ですね。

性能、機能とは直接関係ありませんが、ベーススタンドの上面がレザーパッドになっています。メモリーカードやデリケートな機材を置くこともあるのでイイと思いますし、上質感の演出としてもアリだと思います。
ただ、ワタシは(いま使っている)SW271Cをモニターアームで運用しているので、今後SW272Uを同様にすると、この贅沢で質感の良いスタンドが勿体ないんですよね・・。

OSDコントローラーであるホットキーパックがG2(手前)からG3(奥)になり、ワイヤードからワイヤレスになりました。

デスクトップをケーブルが這わなくなったのも○ですが、切換で複数のモニターを操作できるようになったのが◎。ただし、この機構はSW272Uからのようで、ワタシのSW271C、321Cが対応するわけではなかったです。。。

また、一見小さなコトですが、BenQの細やかなデザイン思考が好ましく感じられたのが、これまでフロントベゼルの中央にあったBenQロゴが、SW272Uではなくなり

無色かつ左端に移動したこと。従来も目立たないグレープリントロゴでしたが、より洗練されました。

一方、使いやすくなったカードリーダーなのですが、メモリーカードをこのように裏面を手前に差し込まなければなりません。おそらく基板レイアウトの事情と思いますが、ここは惜しいなあと思います。

なお、USB-C接続の場合は、USBアップストリームを繋がなくてもカードリーダー等が使えます。MacBook ProなどUSB-Aポートを持たないマシンを繋ぐときは便利ですが、USB-CポートはUHD 60Hz USB 2.0かUHD 30Hz USB 3.1かの選択(前者がデフォルト)なので、そのままだとカードリーダーもUSB端子も遅いと思います。マシンにUSB-A端子がある場合は面倒くさがらずにアップストリーム接続しておくのが良いし、MacBook Proなどの場合は必要に応じて一時的に30P仕様に切り替えるのが良いと思います。

写真・映像編集マスターになる色精度

高画質、美しい色、を謳うディスプレイはたくさんあります。SW272Uももちろん美しい画を見せてくれます。しかし、SW272Uの本質は「モニター」です。大切なのは綺麗に見えることより「正しく見える」ことなのです。

写真をレタッチする、映像をグレーディングする、繊細で、クリエイティブの核となる編集作業において、なにより重要なのは「信頼できるモニター」の存在です。いま見ている色は正しい色か、それを微妙に赤くするときに、その補正度合いは見ているママか、そんなデリケートな作業だからこそ、信頼できるマスターとしてのモニター性能が重要です。
SW272Uはそんな色精度に全振りしたプロ機です。

冒頭に述べたようにAdobe RGB 99%、sRGB 100%、Display P3、DCI-P3 99%の色域をカバーする色再現能力、それを支えるのは10bitパネルと16bit 3D LUTによるハードとソフトの総合技です。ハードウエアだけでもソフトウエアだけでも実現できない領域に同社の研究開発力の強みがあると言えましょう。
CalMAN 、PANTONE 認証を取得しているのも、その証明のひとつです。

SW272Uに限らずの話ですが、BenQの上位機は工場出荷時に全台、個別に調整され、そのキャリブレーションレポートが付属します(写真の黒い封筒)。つまり我々の手元に届くときは全ての個体がチェックされ、充分な品質を持つものだけが届けられるのです。

SW272Uを2か月使ってきて印象的だったのが反射の少なさでした。
これは新しいAGLR(Anti glare & Low Reflection) パネルによるものらしく、このアンチグレアかつ低反射のパネルは非常に効果的に反射を抑制するようです。上記の写真は左から、 ・横位置フード有り ・横位置フード無し ・縦位置フードなし ですが、照明器具の映り込みがほとんど感じられないのが分かるかと思います。正直言うと、色域の拡大はSW321C比で実感できなかったのですが、映り込みの抑制は明らかに実感できるレベルで差がありました。

完全な色再現が出来たらすべてOKかというと、そうでないところが複雑なところ。
それがユニフォミティ(画面の均一性)です。極小のRGB発光体が膨大に並んでいる液晶パネルは、個々の発光体の輝度に微妙な個体差が生じると、明るさにムラが生じます。このムラが液晶パネルのムラなのか、もとの写真や映像にムラがあるのか分かりにくく、精緻な補正の妨げになります。
BenQの上位機種に備わるムラ補正機構は同社独自の技術で、非常に高い均一なユニフォミティを実現しています。デリケートなグラデーションを持った画像の編集時に大きな助けになる機能です。

写真編集と同様に動画編集もモニターが重要なジャンルです。特にここ数年、映像編集のニーズが高まったことでハイエンドなモニターも動画対応が求められました。BenQも動画対応を着実に進め、SW272Uは現時点でBenQ最高の映像編集モニターと言える仕様になりました。具体的には
・映画/映像の基準であるDCI-P3を99%カバー。BenQモニターの中で最高のカバー率かつ他社製を含めてもトップクラス。
・HDR10およびHLG両方のHDR表示に対応。
・HDR表示のポイントとなる輝度はBenQモニター最高の値となる400カンデラ。
・23.976fps・・・等ではない4:2:2/4:2:0/4:4:4のカラーサンプリング(クロマサンプリング)における本当の24P/25P/30Pの正規再生が可能
・SDI-HDMI変換コンバータに幅広く対応
・もちろんUHD-4K(3840×2160)なので、4K動画ファイルのドットバイドット表示が可能
ワタシは業務として映像編集も行うので、これらのスペックは大変頼りになります。

ハードウエアキャリブレーションによる精度の維持と管理

前項で書いたように、SW272Uは高品質な液晶パネルを採用し、工場出荷時に全台校正を行うなど完全な形で出荷されます。しかし、機械は(いや、人もですが)長く使うと微細なズレが積み重なり、当初の精度にズレが生じることがあります。そのズレを補正するメンテナンスがキャリブレーションです。キャリブレーションにはPC側(GPU)の出力を調整するソフトウエアキャリブレーションと、モニター内部の画像処理エンジンを調整するハードウエアキャリブレーションがあり、後者の方が(GPUの能力を絞らずフルに活かすため)優れているとされます。SW272Uは後者のハードウエアキャリブレーションに対応しています。

今回、専用のキャリブレーションソフトが刷新され、Palette Master Ultimateとなりました。なお、キャリブレーターは付属しないので別途用意する必要があります。ワタシはdatacolorの最新型キャリブレーター Spyder X2 Ultraを使っているのですが、Palette Master Ultimateは旧型のSpyder Xしか対応していなかったので、X-rite i1Display Proを借りてきて試しました。

専用ソフトだけに操作性はシンプルで、処理もスピーディです。BenQの記述に依れば過去のものよりスピードも向上し、短時間でのキャリブレーションを実現しているとのこと。

キャリブレーションは目的に応じて違う目標設定で行うことが出来、その結果も3つまでSW272Uに保存できます(校正1〜3)。ワタシは、写真編集用、ビデオ編集用、DCI-P3編集用を作成し、設定しました。前述したホットキーパックG3で手元から切り替えも可能なので、操作感は大きく向上です。

結果も検証して返してくれます。
このキャリブレーションを定期的に(200時間おきくらいが目安)行うことで、カラーマネジメントは精度を維持できるのです。プロ用を謳うモニターがハードウエアキャリブレーション機能を持つのも、いわば当然と言えるでしょう。

必要ならマニュアルによる微調整も可能です。キャリブレーション自体は大事だけどなんか面倒くさくて、つい後回しにしてしまうものなのですが(すみません)このくらい簡単だともうちょっとマメにやれそうです。

縦位置使用にも対応する遮光フード付属

高品質なハードウエアと制御ソフトウエア、そしてハードウエアキャリブレーションによる精度の維持管理によって、高い色再現性をもつSW272Uですが、それを物理的にサポートするのが遮光フードです。

他社を含めハイエンド機には標準で付属する遮光フードですが、これ、画面の表示品質にとってはとても貢献しているものです。ある意味、カメラにおけるレンズフード以上の効果があるかもと思っています(笑)。SW272Uは映り込みが非常によく抑制されていると上の項で書きましたが、遮光フードは画面への映り込みだけでなく、それを見るひとの眼に入り込む光も抑制してくれる重要なパーツです。

BenQの遮光フードはしっかりとした造りに加え、裏面に反射防止の起毛処理がなされているなど、キチンとしたコストを掛けた優れものです。

さらに横位置も

縦位置もパーツの組み替えで対応します。

縦位置使用時にはサイド(向かって左)に来るOSD操作ボタンとUSB & カードリーダー部もしっかり穴を開けてあるのも○
ただ、わたしは普段はセカンダリーモニターも横位置ですが、ポートレート写真の現像時や縦位置動画の編集時など、用途によってモニターをピボットします。その際にフードの組み替えに数分は取られるのでこの辺はちょっと悩ましく、なんらかの解決ソリューションが欲しいと思っています。

GamutDuoによる作業性の向上

SW272Uだけの機能では無くBenQ上位機には搭載しているものも多いGamutDuo機能ですが、この機能は作業性を大きく向上させてくれるものと感じているので今回も紹介します。
GamutDuoは異なる色空間の映像をひとつの画面に並べて表示し、比較できる機能です。

なお、SW272Uには異なる2系統入力をPIPあるいはPBP、もしくはDual View機能はないため、2台のPCからの映像をGamutDuoで較べることは出来ません。あくまで同じPCの表示を色空間設定の違う形で比較できる機能です。

操作手順
・OSDメニューでGamutDuoを選択、モードをオンにすると、入力ビデオが並んで表示される(この時点では同じ色空間)

・OSDメニューのカラー調整に移動し、カラーモードを変更する(例ではモノクロに切り替え)と、左側の画面がそのカラーモードに切り替わる。

ここではsRGBとAdobe RGBで比較表示してみました。

まとめ
SW272Uは2023年10月時点でBenQのカラーマネジメントモニターの最高レベルに位置するクオリティと使い勝手を持っていると感じます。写真編集にもビデオ編集にも適した色精度が担保され、どちらの作業がメインでも不満のない機能が充実しています。特にDCI-P3の99%カバーや輝度400カンデラなど、映像編集には大きなスペックアップがありました。
一般的にモデルチェンジ直後は新型が高留まりし先代との価格差が大きく悩ましい(まして昨今の円高で日本だと何でも高価い)のですが、先代の27inchフラッグシップSW271CとSW272U、なぜかBenQ公式サイトでもAmazonでも新型SW272Uの方が安価なんですよね。これではSW271C(いや、これもいいモニターですよ)を選ぶ意味はなく、SW272U一択です。

また、実はSW272Uの姉妹機、SW272Qが先日、発売になりました。この2機種、姉妹機だけあって解像度が違う(SW272U:UHD 3840×2160 SW272Q:WQHD 2560×1440)以外の仕様はほぼ同じで価格差は約10万円。これは悩ましいところで、基本が写真だけならSW272Qでいいかなあ、とも思いますが、動画もやるならSW272U一択です。UHDなので4K動画がピクセル等倍で動き、チェック出来るのは大きいです。輝度が400カンデラというのも増えてきたHDR動画にはポイント高いですしね。

スペック的には後塵を拝す形になった32型フラッグシップSW321Cですが、ワタシのメインモニターの座は変わらないものの、セカンダリーモニターはSW272Uに更新かなと思っています。モニターアームに換装するのが勿体ない(まだ言ってる)のが悩みどころではありますが。

SW272U 公式製品情報
本レビューはBenQ社より検証機の提供を受けて2ヶ月間試用したレポートです。メーカーの事前チェックはありません。そのため、ワタシの間違いや事実誤認が含まれる場合もあります。事実誤認や間違いがあれば修正し、その修正点を明記します(誤字脱字の修正を除く)。
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