なぜ高価なハードウエアキャリブレーション型のディスプレイを使っているの?と言われれば、それは精度の高い画像処理や映像編集を行うため、と答えます。昔は書斎の照明も色評価用の高演色蛍光管を使っていました(いまは色温度を変えられるLED照明にしています)。それらは仕事の必要性ゆえの環境ですが、副次的な効果として「目に優しい(負荷が比較的低い)」ということも実感しています。
今回、レビューのため借りているBenQ WiT Eye-care デスクライトは、その「目に優しい」をコアにした卓上照明です。
最初、お借りして使う前までの第一印象は、デザイン性に特徴をもたせたカラーマネジメント支援用の高演色スタンドライトかと思い込んでいました。ベンキュー社はディスプレイ、プロジェクターといった表示装置の大手ですし、ディスプレイメーカーのなかには色評価用のスタンドライトをアクセサリーとして用意しているメーカーもあるからです。
しかし本製品(BenQ WiT Eye-care デスクライト)はそうした色評価(業務)を主眼にした特殊なものではなく、もっと日常で有効なデスクトップ用のスタンドライトだと気がつきました。冒頭に書いた「目に優しい」が中心価値といえる照明器具です。その意味で、プロ用(業務用)ではなく、書斎や子供の勉強部屋に向いた製品なのです。
目に優しい、と一言で言っても、なにがどう優しいのか分からないとただのイメージ訴求に過ぎません。PC作業にせよ、子供の勉強や読書(それが漫画だとしても・・)それ自体は眼が疲れるに決まっています。要はその眼への負荷、疲労をどう抑制するか、です。
ベンキュー社のWEBにも解説がありますが、眼の疲れを増加させてしまう要素は
・不均一で明暗差の大きいデスク環境
・まぶしい(明るすぎる)光とムラのある光
・ちらつく明かり(フリッカー)
です。
実際にWiT Eye-care デスクライトを使って感じた部分を含め、原因と対策を考えてみます。
子供の勉強机にもデスクライトはあります。しかし、うちで使っているような一般的なデスクライトでは教科書、ノート、参考書をまんべんなく照らすようなものではありません。いや、もともとデスクスタンド的な照明器具は手元だけ照らす器具、という感覚でした。
しかし机の上の明暗差が大きいとそれぞれに合わせて眼を使うコトになるので疲れは増加します。
最初、デザイン上のギミックに思えた大きなカーブを持つWiT Eye-care デスクライトはその構造によって90cmの照明範囲を持つと説明されています。実際にワイドスパン120cmのデスクで使ってみたところ、ほぼ全体を照明しました。
デスク上を均一に照らすことは眼の疲れ抑制になります。さらに、湾曲した照明部は単に広い照明範囲をもつだけでなく、カーブに沿って輝度を変えています(使用開始当初、このLEDはムラがあるのかと誤解したのは内緒です)。具体的には中央部分に較べ、カーブの両端付近は輝度がやや高くなっています。この輝度差は後述する調光機能を使用しても同じような割合で変化するので設計仕様として差を設けているのだと分かります。
これによりデスク上の明暗差が減っているのと共に、照明部直下の部分が明るくなりすぎるのを抑制し眩しい印象がありません。単純な発想ですが、このような実装がされた照明器具をわたしは他に知りません。
そして個人的に今回もっとも好印象だったのがフリッカーフリー機能の搭載です。
一見、明るく点灯し続けている蛍光灯は実は100Hz(富士川以東)で明滅を繰り返していて蛍光灯下での静止画/動画撮影時に影響が出るのはカメラをある程度やっているひとには常識であり悩みのたね。LED照明はちらつかない(フリッカーが出ない)とはいうけれど、実際にはフリッカーの出る器具も少なくありません。
液晶ディスプレイでも同様で、蛍光灯にせよ液晶ディスプレイにせよ、気がつかないうちに眼が疲れる(眼に負荷をかけている)のは主にフリッカーのせいだと思います。
ワタシはこの数年で書斎の照明環境、ディスプレイ環境を見直し、フリッカーを排除してずいぶん楽になったと思っているため、WiT Eye-care デスクライトがフリッカーフリーを謳っているのは大きな評価ポイントだといえます。
考えてみればベンキュー社は主力製品であるディスプレイでもフリッカーフリーにいち早く取り組んだメーカー。フリッカーの及ぼす眼への負荷についてはずっと意識していたはず。照明器具の開発においてフリッカーフリー構造を組み込むのも当然なのでしょう。
そこを考えたとき、これって子供の勉強部屋にこそ入れるべきデスクライトじゃないかと思うようになりました。眼の疲れは(子供は)気にしていなくても(感じていなくても)確実に溜まっていきます。当初、この価格のライトは子供用には高価(たか)いと考えていたけれど、せめて負荷を軽減する環境を、と考えはじめています。
最後にWiT Eye-care デスクライトの調光、調色機能について。
WiT Eye-care デスクライトはカタログスペック上1800lxの照度を持っています。これは正直いって明るすぎる照度です。もちろんBenQも分かっているようで本体上部のノブを回すことによって明るさをコントロールできます。さらにノブの後ろにある丸い金属リング(普段は電源のオンオフスイッチになります)を2秒触れ続けることでセンサーが起動、周辺環境をセンシングし適切な明るさに自動調光を行うアイケアモードに移行します。
明るすぎず暗すぎず。眼の負荷軽減にはとても効果的ですが、PCディスプレイの照り返しやその他の要因をどこまでインテリジェントに判断してくれるかは、使い込む中で分かるものだでしょう。
さらにノブを押してから回すと、調光ではなく調色モードに入ります。
調色は輝度(明るさ)ではなく、色温度を変更するモード。例えば一般的な電球は3,000K(ケルビン)という色温度です。昼白色と書かれたものは5,000K、昼光色と表記されていると6,500Kとなり、数字が大きい(色温度が高い)ほど青白い方向に色味が振られます。普通は色温度が低いほうがひとは落ち着くと言われ、リラックスしたいときの設定とも言われます。
色温度を変えた写真の例
WiT Eye-care デスクライトは2,700Kから5,700Kの間で色温度を調節可能(マニュアル調節のみ、アイケアモードでは色温度は変化しませんでした)。気分によって色温度を調整してみるのも楽しいものです。
惜しむらくは現在の色温度を表示したりする機能が無いため、5,000Kに設定して色評価用ライトとして使う、といった用途には流用できません。冒頭に書いたように、本製品がプロ用(業務用)ではなく、書斎や子供の勉強部屋に向いた製品、と思う理由のひとつです。
レビュー前は自分のカラーマネジメントの支援機材としてどうか、に興味があったのですが、いろいろ試す中で、この製品はもっと日常的に使う方が向いている製品だと印象が変わりました。
見た目上のインパクトが強く、特殊なデザイン家電に思われそうです(ワタシもそういう第一印象でした)が、実際はその奇抜なデザインを含め、目に優しい照明器具を仕上げるための実直なアプローチでした。自分用(仕事用)としてどうだろう、を確かめたいと思っていましたが、実際に使うなかで仕事場よりも子供部屋にどうよ、という視点で検討している製品です。
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