映画の感想は難しい。いや、そんなのどこまでいっても個人の感想だから好きに言えばいい。いいんだけど、好きな映画と好きなクルマの悪口を聴くと自分の彼女の悪口を言われたようにムッとしません?少なくとも自分にはその片鱗があると自覚してるので、逆にダメな映画をぼろくそに言うのに抵抗があります。
でも、そんな中庸な感想なんて面白くもなんともないですよね。
その意味で、前田有一の超映画批評は圧倒的に面白い。
そうそう、と手放しで同意するときと、ソレハチガウノデハ・・?と鼻白むときと両方あるんだけど、まあ、映画評なんてそんなもんだよね、全方位に深く刺さるなんて、それこそ嘘くさい。
で、そんな前田有一氏が「それが映画をダメにする」というタイトルで連載しているのが、ワタシも連載させて頂いているビデオSALON。
この本は、その連載の4年分のまとめ(加筆修正有りらしい)。連載時に飛び飛びに読んでいたものを改めて一気読み。
あれ?映画批評では超メジャーな前田氏だけど、もしかして「著書」としての単行本は初めて?
面白かった。同時にチガウダロ。と思った回もあるのも同じ。
超映画批評でも前田氏のテキストは映画の登場人物に入っていく批評(感想)ではなく、そこからある種の距離をとって俯瞰する批評だと思っているけれど、この連載/書籍では、その姿勢がもっと明確。
回によっては、映画名は例示に過ぎず、その映画なり環境なり手法なりを「批評」するテキストも散見される。ここは前田氏の狙いなんだろうなあ。
ので、個別の映画評と思って読むと裏切られるというか肩すかしをくうかもしれない。
映画のなかの話では無く、映画を取り巻く外の話、として読むととても面白かった。
映画を愛しているなら、逆にこのくらい醒めたテキストで語るだけの力を持ちたい、と思う一冊。
個人的には恋愛(映画愛)は語るよりするもの、だとは思うけれど。
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