Photo Edge Tokyo 2019でセミナーを聴き、その足でその講師の著書を買った。
南雲暁彦 著 Still Life Imaging スタジオ撮影の極意(玄光社)
コマフォトで連載されていたStill Life Imaging -素晴らしき物撮影の世界- を1冊にまとめるとともに、使用機材のインプレッションやその他を補完した完全版、的な1冊。
分類すればライティングに関するテクニカル解説本、になるのかもしれないけれど、この本のユニークなところは、技術解説本の体裁を取りながら実は撮影の思考プロセスを解説するロジックの手順解説書になっている点。
既存のカメラ撮影技術解説書の多くは、XXXの時はXXXというセッティングで、という教科書になっているし、本書もXXXというお題に対し、こういうセッティングで、という基本体裁はちゃんと守る。
のだけれど、本書は章ごとの冒頭にお題をと共に、それに対するテーマとアプローチ方針を提示する。
そして、ライティングを作って行くプロセスを紹介しながら、個々のフェイズでフォトグラファー南雲暁彦がなにを考え、どこに注意を払い、コダワリ、どう追い込んでいったのかを解説していく。
その途中では毎回違う機材、レンズの解説をしつつ、「なぜ、このお題にこの機材なのか」を書いている。ワタシもビデオSALON等で機材レビューを書くとき、その機材の特性が活かせる作例を、と意識するけれど、この本ではお題のための最適な機材、まあ、そうだよね。レビューのためではなく、写真を撮るために機材は存在するのだ。
さらにバリエーションとして、同じお題に別の視点でアプローチする「展開案」も見せる。
正答集としてのハウツー本ではなく、正解なんていくらでもある、フォトグラファーのアイディアがある限り。と言わんばかりに。
前書きを読むと分かるように、南雲氏はブツ撮りを正解への精度を競う「規定演技」とは考えていない、あるいはそれを否定するところからブツ撮りを展開していく。高い技術力はアイディアを実現するための武器なのだ。(だからこそ、強いモビルスーツが要るんですよね)
さらに南雲暁彦氏は理屈も含めて機材を語れるフォトグラファーなので、書籍化によって追加されたページの解説も読み応えあり。ブツ撮りという一見地味な表現世界を支える(機材の)技術と(撮影、ライティングの)技術、そしてアイディアとロジックと美意識、といった一連のものを体感するに好適な1冊。
そう、ワタシなんか、この本で書かれたお題のようなレベルの撮影をすることはきっと無いと思う。だけど、そのお題に対し、プロのフォトグラファーがどう捉え、考え、どう手を動かしていくのかを追体験するのは、きっと自分のレベルの底上げになるのだと思いながら読んだ。オススメ。
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